Y、これまで得られた調査資料の概要

 金子(1995)2)によれば、東京都内の小学校の6年生298人を対象とした調査で、「いのち」や「死」といったことについて、「一度死んだ生き物が生き返ることがあると思うか」との問いに対して、「死んでも生き返る」、ないしは、「生き返ることもある」と思っている子どもが49.7%いると報告している(表_1)。
  この事実は、我々のその後の小学校4〜6年生の調査(表_1)においても、「一度死んだ人が生きかえることがある」と思うかとの問いに対して、あるとの答えが126例(33.9%)、ないが126例(33.9%)、分からないが117例(31.5%)の結果と若干の頻度の違いはあるが、少なくともこれまでの研究とはかなりに違いを見せており、極めて深刻な問題として考えておく必要がある。その後の調査では、中学校の生徒約450名での調査では、次のように、同様な結果が見られている。やはり、ありの回答が半数を占めるのである。これらの成績は、地域的偏りや、調査人数がおまり多くないなどの問題がある可能性があるため、2003年には、こども未来財団のご協力で、約2000名弱の対象にたいして調査を行った。
 この結果では、それまでの成績と比べるとやや少ないとはいえ、やはり、2割強のものが@とAに回答しているのである。
  筆者はこの成績を最初見た時信じられなかった。

  表1 「一度死んだ生き物が生き返ることがあると思うか」
との質問に対しての回答
金子ら 中村 中村 中村
調査年度 1995 2000 2002 2003
対象 小6 小4〜小6 中学生 小・中・高校
例数 298 372 441 1887
@ 生き返る 23.8 33.9 49.3 9.2
A 生き返ることもある 25.9 12.7
B 生き返らない 31.6 33.9 33.3 32.9
C わからない 31.5 17.4 30.9
D その他 14.3
 
お侘び
  この表の記載に従来入力ミスがあり、訂正いたしました。お許しください。
  また、この項目での@、Aの死んでも生き返る、ないし、死んでも生き返ることもあるの回答をしたものへ、「なぜ」と聞いたのが次の表である。
表2 「表1」において「生き返る]あるいは「生き返ることがある」に○をつけたものに
    「なぜ」と聞いた回答の頻度
中学生 2004年度
@見たことがある 59例(17%) 87例(13.7%)
A教えてもらった 57例(17%) 127例(20.1%)
B何となく 229例(66%) 308例(48.7%)
Cその他 111例(17.5%)

 さらに、この調査の中で「誰でも死んだらこわいと思うか」という質問がある。
 この質問への回答を次の表に示す。
 表3 「誰でも死んだらこわいと思うか」という質問にたいしての回答の頻度     
度数 パーセント 有効パーセント
有効 はい 797 42.0 48.1
286 15.1 17.3
いいえ 573 30.2 34.6
合計 1656 87.3 100.0
欠損値 システム欠損値 241 12.7
合計 1897 100.0
 なんと、こわいと思わないものが半数を超えているのである。筆者の常識で言えば、「死を考えたら、こわくなるのではないかと思うが、そうではないのである。
 この結果をどのように考えるか?
 筆者はこの結果からこの回答をした若者たちが死をほとんど考えていないのではないか? あるいは、死を考える機会がないのではないか?、さらに言うならば、誤って死を捉えている可能性すら考えられるのである。
 これらの資料の延長線上に、大学生になっても、「死んでも生き返ると」信じていた女子大生や、歯学部学生や看護大学の学生の存在が浮かび上がってくるのではないか?
 もし、この仮説が正しいとしたならば、由々しき事態が想定され、わが国の将来は極めて問題を包含した社会となることが予想されるのである。筆者としては、このような事態が到来する以前に、前もっての対応がなされなければいけないと考える次第である。
 特に強調したいのは、この課題にたいしての対応方法は、いまだ、十分に解決されているとはいえないかもしれないが、適切な手段を有しているということである。
 これが、我々のいう「死を通して生を考える教育:Death Education」なのである。
 繰り返して言うが、現在のわが国の現状は極めて憂慮すべき段階に達しており、早急にその対応策を講じないと恐るべき社会の到来がまじかに迫っていると考えるのは筆者のみであろうか?
 出来るだけ多くの人達に、ご共感を頂き、この喫緊な課題に取り組んでいただける方々が一人でも多くこの運動にご参加頂けることを心より願っている。

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