\、日本小児保健学会で発表した資料@ |
演題名 「死を通して生を考える教育」の重要性−その1− −バーチャルリアリティーと死の認識の関連性について− 所属 日本女子大学家政学部児童学科、日本大学国際関係学部、和光小学校、和泉小学校 氏名 ○中村博志、服部慶亘、藤田康郎、野崎佳子 T、はじめに ここ数年の間に、これまでの考えでは到底理解できないような数多くの子どもによる残虐な事件が多発している。これらの事件の背景には、いくつかの背景が考えられるが、我々はその一つとして、現代の子ども達があまりにも死から遠ざかった結果として、死を軽んじ、死を考えなくなった事が挙げられると考えている。金子等1)は小学校六年生のアンケート調査により、一度死んだ人が生き返るかどうかと言う質問に対して、ある、あるいはあるかもしれないと言う答えが約半数の子どもに見られると報告している。我々はこのような事が本当に事実であるか、現代に生きる子ども達が死をどのように認識しているかを解明するべくこの調査を行った。また、そればかりではなく、このような死の認識が、他の要因と何らかのかかわりがあるかどうかも、同時に調査を行った。アンケート調査・結果は以下に示すごとくである。 U、対象 アンケート調査に協力していただいた小学校は、A小学校とB小学校の二校である。A小学校では100名、B小学校では272名の子ども、合計372名の子どもが協力してくれた。学年別では、3年生が74名、4年生が126名、5年生が66名、6年生が106名であった。性別では男が89名、女が92名であった。 V、結果 テレビゲーム(けいたい型のものを含む)をしたことがありますかとの問いに対して、前にはしていたが62例、今もしているが278例、したことほとんどないが22例であった。 今もしていると答えた人に対して最近の1週間では、1日にどのくらいテレビゲームをしましたかとの問いに対して、1時間までが155例、1〜3時間までが93例、3〜6時間までが23例、6〜9時間までが9例、9〜12時間までが1例、12時間以上が3例であった。 今まで1日に一番していた時にはどのくらいでしたかとの問いには、1時間迄が58例、1〜3時間迄が133例、3〜6時間迄が71例、6〜9時間迄が19例、9〜12時間迄が16例、12時間以上が1例であった。 今まで過去何年間くらいテレビゲームをしていますかとの問いには、1/2年が2、1年が26例、2年が38例、3年が54例、4年が67例、5年が65例、6年が39例、7年が18例、8年が10例、9年が7例であった。 今までのうち、一番テレビゲームをしていたのはいつ頃ですかとの問いに対しては、3歳が5例、4歳が3例、5歳が2例、6歳が20例、7歳が41例、8歳が27例、9歳が42例、10歳が39例、11歳が17例、12歳が2例であった。 どんなテレビゲームが好きですかとの問いには、ロールプレイングゲームが170例、アクションゲームが154例、シューティングゲームが61例、育成ゲームが136例、その他が82例であった。 好きなゲームソフト名は、スマッシュブラザーズ(40例)、クラッシュバンディグー(15例)、ドラゴンクエスト(14例)、カスタムロボV2(8例)、マリオパーティー、マリオテニス、ポケットモンスター、パワフルプロ野球、ダンスダンスレボリューション、ファイナルファンタジー等であった。 ゲームの画面に出てくるいろんな技を試してみたいと思ったことはありますかと問いに対して、はいは187例、いいえは133例であった。この問いに、はいと答えた人に実際に試したことがあるかを聞いた質問では、あるが86例、ないが99例であった。それはどんな技ですかとの問いに対して、パンチ15例、キック18例が比較的多い項目であった。 生き物を飼った経験がありますかとの問いに対しては、ある351例、ないが18例、おぼえていないが1例であった。 生き物を飼った経験のある人だけに、その生き物の名前を聞いたところ、金魚(188例)、ハムスター(113例)、イヌ(89例)、カメ(58例)、猫(43例)、ザリガニ、カブトムシ、クワガタ、ウサギ、メダカ、魚リス等が多かった。 飼っていた生き物が死んでしまったのを見たことがありますかの質問では、あるが309例、ないが50例であった。 さらに、あると答えた方に、そのとき葬式をやったかどうかとの問いに対して、はいは216例、いいえが92例であった。 次に身近の人の死を経験した事があるかどうかを聞いたところ、3人以上あるが40例、1〜2人あるが225例、ないが96例であった。このうちあると答えた人に、どんな関係かを聞いた質問では、父が3例、母が3例、兄弟が5例、おじいさん・おばあさんが142例、おじさん・おばさんが53例、友達が9例、その他110例であった。 その時、お葬式に参加したかとのとの質問に対して、いつもしたが90例、したことはあったが148例、しなかったが25例であった。 それは何歳のときですかとの質問に対して、0歳が1例、1歳が8例、2歳が12例、3歳が27例、4才が20例、5歳が37例、6歳が29例、7歳が44例、8歳が64例、9歳が57例、10歳が39例、11歳が29例、12歳が12例であった。 その時、考えた事や感じた事を聞いたところ、悲しいやかわいそうなどの回答が多かった。 その事を誰に話したかを聞いた所、友達が44例で最多であり、お母さんが16例、先生が13例であり、お父さんは父母4例を入れても7例であった。 一度死んだ人が生きかえることがあると思うかとの問いに対して、あるとの答えが126例(33.9%)、ないが126例(33.9%)、分からないが117例(31.5%)であった。 死と言う言葉を聞いて何を思い浮かべるかを以下の選択枝から選んでもらった結果は、恐い237例、息苦しい49例、悲しい283例、堪えられない72例、苦しい65例、重い57例、辛い197例、難しい53例、素晴らしい5例、寂しい157例、暗い120例であった。 人は死んだらどうなるかとの問いに対しては、天国や地獄へ行くという回答が多かった。 あなたが死んだらどうなると思うかとの質問では、天国や地獄へ行くとの回答や、親や家族や親戚が悲しむと言う回答と、骨になるとか、暗くなるや悲しくなるなどの反応の3種類の回答に大別できた。 魂や霊魂がこの世にあると思うかとの問いに対しては、あると思うが164例、ないと思うが90例、分からないが21例であった。 死ねと言った事があるかとの問いに対しては、ありが237例、ないが122例であった。どんな時、誰に言ったかとの質問では、けんかの時に、友達や兄弟に言うとの回答が多かった。また、ふざけて言うとの回答が、うち23例に見られている。 死ねと言われた事があるかとの問いに対して、ありが348例、ないが17例であった。これも前問と同様で、けんかの時、友達からという回答が多く、この場合も、ふざけてと言うのが18例に見られていた。 生まれた時の話を聞いたかとの問いに対して、ありが369例、ないが1例であった。 命は大事だと思うかとの質問に対して、1例の分からないという回答と2例の無回答を除く全員がはいと回答をしていた。それはなぜですかとの質問には、かけがいのない命という回答と、大切なものと言う回答と、死ぬ・なくなるという3つの回答に大別できた。 さらに、いくつかのクロス分析の結果は以下のごとくである。 まず、死んだ人が生き返るかどうかと、コンピューターゲームの頻度、生き物を飼った経験や、身近な人の死との間のクロス分析にも優位な結果は出ていない。 W、考察 今回の調査では最初の仮説であるゲーム等と死の認識の間には直接の関係は見られなかったが、死の認識がこれまでとはかなり異なり、「生き返る」事があると考えている子どもが約1/3に見られているのは、極めて重視すべき結果と考えられた。 X、まとめ 以上、今後我々が「死を通して生を考える教育」を進めて行くに際して必要な、現代の子ども達が死をどのように認識しているか等を調査し、若干の知見を得た。 Aへ |
死を通して生を考える教育関係トップに戻る |